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支持のからくり

大統領のわがままと癇癪で政府機能が1ヵ月も麻痺しているアメリカですが、大統領の支持率が大きく影響を受けている様子はありません(Gallup)。40%を切っているとはいえ、支持率4割弱は安定しています。議会を通過した予算案に大統領が口出しできる国のシステムもどうかと思いますが、この体たらくを引き起こしている張本人を国民の4割が支持している事実の方が文明国に住む人間にとっては驚きです。

1年ほど前のものですが、トランプ支持者の5つの特徴について書かれた記事を見つけました。
An Analysis of Trump Supporters Has Identified 5 Key Traits
支持者の分析から以下の5点を指摘しています。
1. Authoritarian Personality Syndrome (権威主義的パーソナリティ症候群)
2. Social dominance orientation (社会的支配志向性)
3. Prejudice (偏見)
4. Intergroup contact (集団間接触)
5. Relative deprivation (相対的欠乏)

1はつまり、個人の自由意思を犠牲にして(放棄して)強力な権威に付き従う傾向で、2は、その傾向に関連して自分たちの属している集団がその他の集団より優れていると考えることです。トランプの支持層で強大な組織票を握っているのが福音派をはじめとするキリスト教右派と呼ばれる一団です。キリスト教を信奉していること自体が権威主義的(絶対服従の唯一神信仰)で社会的支配志向(自分たちだけが助かり他は地獄に落ちる)なわけですから、常々強さと正しさを主張するトランプは、キリスト教原理主義者の目に魅力的に映っても不思議はありません。言っていることがすべてはったりだとしても。

3は言わずもがなですが、トランプの発言、一挙手一投足が白人至上主義者に受けが良く、マイノリティや移民、非クリスチャンに対する偏見や嫌悪を助長しています。

4は個人が所属するグループとは別のグループのメンバーとどれほどの接触があるかということですが、トランプ支持の白人層は一般的なアメリカ人よりマイノリティとの接触が著しく低いということが分かっているとあります。

5は経済的に与えられて当然と思われる豊かさを享受できていない状態のことで、これを感じている層には、トランプの「中国が悪い」、「メキシコが悪い」、「自由貿易協定が悪い」という幼稚な悪態と関税攻撃が心地よいのでしょう。


これらは、トランプ支持者の持つ傾向としてはわかり易い分析ですが、どうも根本的な問題をカバーしていないように思います。教養の無さ、教育レベルの低さです。高等教育を受けたかどうかということより、広い視野を持って俯瞰で物事をとらえる洞察力のようなものを身に付けているかどうかです。

日本は島国ですが、日本人の国際感覚はアメリカ人のそれよりずっと上です。日本人には日本の外について知ろうという渇望のようなものが備わっていますが、一般的なアメリカ人にそれはありません。世界の中のアメリカを知ろうとしないので「America First!」というスローガンに心酔してトランプ支持者になったりするのです。

情報を取捨選択することができない人が多いことも支持率維持に貢献しています。アメリカは先進国の中では識字率が低い(文盲率が高い)ことで有名ですが(識字率86%)、何より驚いたのが以下の一節です。
"The Organization for Economic Cooperation and Development also estimates that a full 50 percent of adults may struggle to read a book at the 8th grade level."
(OECDによると大人の5割は中学2年レベルの本を読むのに苦労する。)
- International Literacy Day 2018: 5 Fast Facts You Need to Know

これでは、トランプのスピーチやツイート、そしてトランプの太鼓持ち保守メディアに丸め込まれるのを防ぎようがありません。

議会は大統領の権限を縮小する法案を審議すべき。

テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

崩壊するアメリカの価値観

Maybe he did and maybe he didn't!

これは先週ドナルド・トランプがテレビカメラの前で語り、ホワイトハウスの公式声明文の中にも盛り込んだ言葉です。ここでいう"he"は、サウジアラビアのムハンマド皇太子を指し、"did"はカショージ記者の殺害を知っていた(命令した)ことを指します。CIAは皇太子(米メディアは名前を省略してMBSと呼んでいる)がカショージ記者の殺害を指示したと断定しましたが、トランプは確証がないとしてCIAの報告をはねつけました。

Statement from President Donald J. Trump on Standing with Saudi Arabia

この公式声明は『大統領がサウジアラビアの肩を持つ言い訳』であり、中学生レベルの論理思考力と文章構成力で書かれています。大統領室から出てくる文書に感嘆符が8つも付いている時点で書いた人間の知能が知れます。政治家も大統領クラスになれば、スピーチライターを複数抱えているものですが、類は友を呼ぶというのでしょうか、書かれている内容はトランプの言葉そのものです。理路整然とアメリカの価値観とアメリカが取るべき然るべき行動を語れるライターもいるのでしょうが、そんな人間がこの声明に関与したとは思えません。

CIAは皇太子が電話で記者殺害を指示した盗聴記録を保持しているとする報道もありましたが、CIAが皇太子を殺人に結び付ける報告書を出した以上、それは事実と捉えて間違いないでしょう。それに対してのアメリカ大統領の反応が"Maybe he did and maybe he didn't"発言です。大統領自身が「アメリカの諜報機関なんかあてにならん」と言ったのと同じことです。まったく前代未聞です。

大統領声明の中身は支離滅裂ですが、ムハンマド皇太子について書かれたほんの一節と声明内容全体を照らし合わせて要約すると以下のようになります。

サウジアラビアの皇太子は人殺しかもしれないが、それは我々には関係がない。サウジは共通の敵イランと戦うための中東における重要なパートナーであり、アメリカに何千億ドルのお金を落としてくる良い顧客であり、原油価格を安定させるのに欠かせない最大の原油産出国の一つである。アメリカはこれからもサウジアラビアと共にある。

トランプは"自己肯定のために"ムハンマド皇太子を擁護するだろうとは思っていましたが、ここまでふてぶてしく『殺人を容認』するというところまでは考えが及びませんでした。カショージ記者はアメリカ在住者でしたがアメリカ国籍は持っていませんでした。トランプは、アメリカ市民がサウジアラビアの権力者に殺害されても同様の声明を出すのでしょうか?

ドナルド・トランプがアメリカ大統領になってから、自由平等、表現・信仰・報道の自由といったアメリカの根幹的な価値が音を立てて崩れ始めました。今回は「人権・人道よりも金」と大統領が宣言したのですから、今後はアメリカの外交が混迷します。アメリカがイランやロシア、中国などを人道的見地から非難すれば、「ダブルスタンダード!」という叱責と侮蔑になって返ってきます。人殺しを見逃したことでこれからは足元を見られてしまうのです。

もう共和党内からトランプ降ろしが始まってもいいレベル。

テーマ : アメリカお家事情
ジャンル : 政治・経済

楽天の英語力

Season's Greetings!?

好き嫌いにかかわらず誰にも楽天市場で買い物をしなければならなくなることがあります。買い物をするには当然会員登録をしなければならず、そうすればある程度の迷惑メール(広告・勧誘等)を受け取ることは我慢しなければなりません。

楽天から『まだ間に合う👻 ハロウィングッズをご紹介!』というタイトルのメールが届いていたのですが、それが以下のように始まっていて唖然としました。

RakutenHalloween


いわゆる目が点になるというやつでしょうか。10月に"Season's Greetings"という挨拶文を使う人間(会社)がいるとは思いもよりませんでした。この違和感を例えて言うなら、暑中見舞いに「今年もよろしくお願いします」と書かれているようなものです。

アメリカで"Season's Greetings"という挨拶文の書かれたカード(メール)を送り合うのは、Thanksgiving Day(感謝祭)からNew Year's Day(元旦)の間のみです。Season's GreetingsのSeasonは、Holiday Seasonを指していて、それは感謝祭から元旦までの約1ヵ月です。10月にあるハロウィンは、Seasonにカウントされないのです(そもそも子供の催事事ですし)。

これで思い出したのが、楽天の社内英語公用語化です。社長自らEnglishnizationという訳の分からない造語(Englishnって何なん?)を振りかざして、TOEICで何点取らなきゃクビってやってたのが数年前ですが、その成果がこれですか?

日本人が日本語を乱すのは勝手ですが、英語を誤用するのは結局自分たちに恥になって返ってきます。机上の英語学習で高得点を取ったところで、文化を理解した上でのコミュニケーション力にはつながりません。

楽天が自ら「英語公用語化大成功!」と啖呵を切っていない以上、大した成果は上げていないのでしょう。上のGreetingsを見ればよくわかります。

結局EnglishnEnglishではなかったってことかな、三木谷君?

テーマ : 英語・英会話学習
ジャンル : 学校・教育

人権と国益

サウジアラビア人記者がトルコのサウジアラビア総領事館で殺害された事件で世界中のメディアが色めき立っていますが、アメリカやサウジアラビアに近しい西側諸国はできればこの件にはかかわりたくないというのが本音だと思います。サウジアラビアとの良好な関係(地政学的に)を損ないたくはないからです。ところがそうは問屋が下ろさないというのが、アメリカやサウジと関係の悪いトルコという構図が見て取れます。

独裁政権が反体制分子を始末するというのは珍しいことではありませんし、お隣の中国や朝鮮でもごく日常的に行われています。ただ、それを他国の領土内にある大使館や領事館で行うというのであれば、それは恐ろしく大胆というより、恐ろしく稚拙な社会認識力の現れと言わざるを得ません。総領事館に入った著名人がそのまま行方不明になった、あるいは殺害されたというのに、国の実権を握っているトップが何も知らない・知らされていないでは筋が通らないのです。

サウジ政府、「失踪」記者が総領事館で死亡と初めて認める

偶発的な事故だったのであれば、即座に警察や救急に通報しているはずですし、当然死体も館内にあったはずです。しかし、最初のサウジ政府の公式コメントが「記者は総領事館を出た」ですから、初めから隠蔽する気満々でした。だいたい、「ジャーナリストが総領事館内で職員と殴り合って死んだ」というお粗末な後付け説明を誰が信じるでしょうか?

ドナルド・トランプも、この事件が明るみに出た直後は「事実であれば、アメリカはサウジアラビアに対する制裁も辞さない」と強気なコメントを発しましたが、すぐにトーンダウンして、おそらく今では「皇太子は何も知らなかった」という言い訳に同調して制裁を発動することを何とかして避けたいと考えているはずです。石油の産出量制限による原油価格高騰はともかく、散々トップセールスの成果を自慢した1000億ドル規模の武器売買契約を破棄されたくはないからです。

しかし、トルコが記者殺害の音声・映像記録を保持していると言っている以上、事はそんな簡単に丸く収まりそうにありません。人権、表現の自由の擁護者であると常日頃から主張しているアメリカや西側諸国が人権蹂躙のデパートであるサウジアラビアにどう対処するのかは見ものです。

『人権』という言葉はNGOやジャーナリストによってよく使われる言葉ですが、国(国連含む)がそれを取り合うかどうかはそろばん勘定次第です。例えば90年代までアメリカでは"Free Tibet"(チベットを解放しろ)という標語をよく耳にしましたが、21世紀になって中国が経済力をつけると、それはとんと聞かれなくなりました。近年中国の人権状況は習近平政権下で悪化の一途をたどっていますが、どの国も人権に関して公に中国を批判してはいません。

首謀者*をはじめ9.11のハイジャック犯のほとんどがサウジアラビア国籍、あるいは出身だったのに、サウジアラビアがテロ支援国家の指定を受けることもなく、のうのうとアメリカの同盟国気取りを続けていられるのも、すべてアメリカのそろばん勘定のおかげです。サウジアラビアに付いて中東を2分、3分させておくことはアメリカの国益にかなうのです。(*オサマ・ビンラディンは犯行時無国籍。)

つまり人権は、国家間の懸案の中では常に二次的な重要度しか持たないということです。今回の失踪・暗殺事件も、サウジアラビア関与の証拠がない状況であれば、アメリカや西側諸国は問題にさえしなかったでしょう。トランプなら"fake news"で済ませたところです。しかし、証拠を握っているのが反米色の強いエルドアン政権とくれば、丸め込むことさえ望み薄です。

暗殺も任務の一部の諜報機関を持っている国が、他国の暗殺事件を受けて人権を説くというのもどうかとは思いますが、世界のジャーナリストは黙ってはいません。さぁ、アメリカはどう出るのか。

(記者の名前Jamal KhashoggiのKhashoggiは、英語メディアでは当初カショーギと発音されていましたが、今ではカショージでまとまっているようです。日本メディアは今のところカショギ。)

現地のヒットマンを雇う金が惜しかったわけでも無かろうに。

テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

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Author:ぱうあう

アメリカ居住歴13年(大学+仕事)、日本居住歴ン十年。英語や日本語、文化、ニュースに突っ込みを入れます。

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